「社長は労災保険が使えない」と聞いて、不安を感じたことはないでしょうか。現場に出ることも多い中小企業の経営者にとって、業務中のケガや病気は決して他人事ではありません。

実は、事業主や役員でも「特別加入制度」を利用すれば、労働者と同様の補償を受けられます。手続きは労働保険事務組合または社労士事務所を通じて行うため、自分一人で抱え込む必要はありません。

この記事では、中小事業主の特別加入制度について、対象要件・保険料の計算方法・申請手続きまでをわかりやすく解説します。「自社は対象になるのか」「年間いくらかかるのか」という具体的な疑問に答えながら、制度を活用するためのヒントをお伝えします。

労災保険の特別加入制度とは何か:基本と対象者

社長・役員は通常の労災保険の対象外ですが、「特別加入制度」を利用することで、労働者と同じ補償を受けられます。対象者は4つの区分に整理されており、中小企業の経営者に最も関係が深いのが「中小事業主等」の区分です。

通常の労災保険が社長・役員に適用されない理由

社長・役員が通常の労災保険を使えない理由は、「労働者ではないから」という一点に尽きます。労働者とは、会社から指揮命令を受けて働く立場の人のこと。

一方、社長や役員は自分で会社の方針を決め、自ら指示を出す立場にあります。「誰かに指示される側ではなく、指示する側」であるため、労働者性が認められず、通常の労災保険は適用されません。

現場に出ることが多い中小企業の経営者にとって、この「適用外」という現実は看過できないリスクです。だからこそ、特別加入制度の存在を知っておくことが大切なのです。

特別加入制度が設けられた目的と法的根拠

特別加入制度は、「業務上のリスクが高いのに補償がない人を守るため」に設けられた制度です。労働者災害補償保険法(労災保険法)第四章の二「特別加入」(第33条以下)に根拠があり、厚生労働省が管轄しています。

現場に出る機会が多い中小事業主や、一人で仕事を請け負う一人親方は、労働者と同様のリスクを抱えています。しかし制度上は「労働者ではない」ため、通常の補償からは外れてしまう。この矛盾を解消するために生まれたのが特別加入制度です。

「法律上できないなら、別の仕組みで守る」という発想で設計されており、業務上災害・通勤災害の両方が補償対象となります。

加入できる4つの区分と中小事業主の位置づけ

特別加入制度には、加入できる区分が4つあります。この記事では、中小企業の経営者に最も関係の深い「中小事業主等」にフォーカスして解説します。

4つの区分は、①中小事業主等(業種ごとの従業員数要件を満たす事業主・役員・家族従事者)、②一人親方等(建設業・個人タクシーなど、労働者を使わずに仕事をする方)、③特定作業従事者(農業・家内労働など特定の作業に従事する方)、④海外派遣者(海外の事業に派遣される方)です。

特別加入制度の4区分 比較一覧
自分がどの区分に該当するかを確認しましょう
項目 中小事業主等 一人親方等 特定作業従事者 海外派遣者
対象者 業種ごとの従業員数要件を満たす事業主、役員、家族従事者 労働者を使用せずに事業を行う自営業者とその家族 特定の危険度が高い作業に従事する方 国内企業から海外の事業場に派遣される方
加入経路 労働保険事務組合を通じて申請 特別加入団体を通じて申請 特別加入団体を通じて申請 派遣元の団体または事業主が申請
主な対象業種 全業種が対象(業種別に50人/100人/300人以下の要件あり) 建設業、個人タクシー、林業、漁業、医薬品配置販売 等 農業(特定農作業)、家内労働、介護、ITフリーランス 等 業種を問わず海外派遣が対象
※中小事業主等の従業員数要件:金融業・保険業・不動産業・小売業は50人以下、卸売業・サービス業は100人以下、その他の業種は300人以下

「中小事業主等」として加入できるのは、業種ごとに定められた従業員数の上限以下の事業主です。厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」によると、建設業・製造業・運輸業等は常時300人以下、卸売業・サービス業は100人以下、金融業・保険業・小売業・不動産業は50人以下が対象です。

「自社は対象になるのかわからない」という場合も、業種と従業員数の2点を確認するだけで判断できます。ご不明な点はお気軽にご相談ください。

令和6年11月〜のフリーランス特別加入との違い

令和6年11月から、フリーランスを対象とした特別加入制度が新設されました。「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス法)」の施行に合わせて導入されたもので、中小事業主向けとは対象者・加入経路・補償範囲の3点で異なります。

対象者の違いから整理すると、中小事業主等は「労働者を雇用している事業主」が前提ですが、新設のフリーランス向けは「特定受託事業者」として業務委託を受ける個人が対象です。加入経路も異なり、中小事業主等は労働保険事務組合への委託が必須ですが、フリーランス向けは特定の団体経由で加入します。

補償範囲についても、フリーランス向けは業務の性質に応じた独自の基準が設けられており、制度の入口が根本的に違います。「自分はどちらに当てはまるのか」と迷う場合は、状況を一緒に整理しますのでご連絡ください。

中小事業主が加入できる条件と業種別の基準

中小事業主として労災保険の特別加入制度を利用するには、業種ごとに定められた従業員数の上限を満たし、かつ労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託していることが必要です。業種と従業員数という2つのポイントを押さえるだけで、加入できるかどうかはほぼ判断できます。

対象となる業種と企業規模の目安一覧

業種によって、対象となる従業員数の上限は異なります。金融業・保険業・小売業・不動産業は常時50人以下、卸売業・サービス業は常時100人以下、建設業・製造業・運輸業等は常時300人以下が対象です(厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」より)。

ここでいう「常時」とは、繁閑に関わらず常態として使用している労働者の人数を指します。通年雇用でない場合でも、1年間に100日以上労働者を使用していれば「常時使用している」とみなされます(厚生労働省規定)。支店や複数現場がある場合は、それぞれの労働者数を合算して判断します。

業種別 特別加入の対象となる従業員数の上限
業種区分 常時使用する労働者数
金融業・保険業・小売業・不動産業 50人以下
卸売業・サービス業 100人以下
建設業・製造業・運輸業等 300人以下
出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」

加入に必要な2つの要件とは何か

中小事業主が特別加入するためには、①雇用する労働者について労働保険の保険関係が成立していること(1人以上の労働者を雇用し、労災保険に加入していること)、②労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること、という2要件をいずれも満たす必要があります(厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」より)。

①の保険関係成立は、労働者を1人でも雇用していれば法律上自動的に成立するものです。ただし、まだ労災保険に加入していない場合は、特別加入の前に保険関係の成立手続きが必要になります。②の委託要件は、特別加入の申請そのものを委ねることではなく、日常的な労働保険の事務処理(保険料の申告・納付など)を委託するという意味です。

この2要件が設けられている背景には、特別加入制度が「労働者と同様の環境で業務に従事する事業主」を補償対象とするという制度の趣旨があります。業種・規模の前提条件に加えて、この2要件を確認することが加入への確実な出発点です。

労働保険事務組合と社労士事務所の役割と違い

労働保険事務組合は、事業主に代わって労働保険の申告・納付などの事務処理を行う団体です。一方、社会保険労務士(社労士)事務所は、特別加入の手続きに関する相談や書類作成・提出の代行を行う専門家であり、この二者は役割が異なります。

特別加入の流れを整理すると、まず事業主が労働保険事務組合に委託することで加入要件を満たし、その後の申請手続きを社労士が代行するという形が一般的です。「事務組合への委託」と「社労士への依頼」は別々のことのように見えますが、KT社会保険労務士事務所では双方の調整を含めて一括サポートしています。

労働保険事務組合と社労士事務所の役割の違い
労働保険事務組合
厚生労働大臣の認可を受けた中小企業主の団体。事業協同組合や商工会議所などが母体となる
労働保険料の申告・納付の代行、保険関係成立届の提出、雇用保険の届出事務など、労働保険に関する事務処理全般
事業主が事務委託することで特別加入の「加入要件」を満たす(必須条件)
社労士事務所
国家資格を持つ労務の専門家(社会保険労務士)が運営する事務所。個別の相談対応や手続き代行が可能
特別加入の手続きに関する相談・助言、申請書類の作成・提出代行、労務管理全般のコンサルティング
申請手続きの代行と書類作成で事業主をサポート(専門家による実務支援)
特別加入手続きの一般的な流れ
事務組合に委託加入要件を満たす
社労士が申請代行書類作成・提出
特別加入の承認労働局長が決定
KT社会保険労務士事務所では、事務組合への委託と申請手続きの双方を含めた一括サポートに対応しています

自社が対象かどうか確認するための3つのポイント

自社が特別加入の対象かどうかは、①業種の確認、②従業員数の確認、③労働保険の加入状況の確認、という3点を順番に確認することで判断できます。

まず①の業種については、日本標準産業分類に基づいた自社の業種区分を把握することが出発点です。建設業や製造業に付随する作業を行っている場合でも、主たる事業の業種で判断されるため、自社の事業内容を改めて整理してみてください。

次に②の従業員数は、常時使用している労働者数を正確に把握します。③の労働保険の加入状況については、すでに労災保険・雇用保険に加入しているかどうかを確認します。まだ加入していない場合は、特別加入の前に通常の労働保険の成立手続きが必要です。

「3つすべて確認したけれど、自社が当てはまるかはっきりわからない」という場合も、業種と従業員数を教えていただければすぐに確認できます。どんな些細なことでもご相談ください。

保険料の計算方法と給付基礎日額の選び方

特別加入の年間保険料は「給付基礎日額 × 365日 × 保険料率」という計算式で求められます。給付基礎日額(補償額の基準となる1日あたりの金額)と業種ごとに定められた保険料率、この2つを把握すれば、おおよその保険料を自分でシミュレーションできます。仕組みを一度理解してしまえば、実はとてもシンプルです。

年間保険料の計算式と業種別保険料率の目安

年間保険料は「給付基礎日額 × 365 × 保険料率」で計算します。この式のポイントは、業種ごとに異なる「保険料率」にあります。

厚生労働省が定める令和6年度の保険料率(第一種特別加入保険料率)を例にすると、建設業は事業の種類によって異なり、一般的な建築工事(建築事業)は9.5/1000、既存建物への設備工事(既設建築物設備工事業)は12/1000などが目安です。製造業は業種により3〜15/1000前後、小売業・サービス業は3/1000前後となります(出典:厚生労働省「労災保険率表」令和6年度)。

たとえば給付基礎日額を10,000円に設定した建築事業の場合、年間保険料は「10,000円 × 365 × 0.0095=34,675円」です。具体的な数字で計算してみると、思ったより身近な金額に感じる方も多いはずです。

業種別 特別加入保険料率 一覧表 令和6年度(2024年度)第一種特別加入保険料率 / 厚生労働省規定
事業の種類 保険料率(/1000) 年間保険料(税込)
建設業
建築事業 9.5 34,675円
既設建築物設備工事業 12 43,800円
道路新設事業 11 40,150円
舗装工事業 9 32,850円
その他の建設事業 15 54,750円
製造業(代表例)
食料品製造業 5.5 20,075円
金属製品製造業 9 32,850円
機械器具製造業 5 18,250円
小売業・サービス業等
卸売業・小売業・飲食店・宿泊業 3 10,950円
金融業・保険業・不動産業 2.5 9,125円
その他の各種事業(サービス業等) 3 10,950円
年間保険料 = 給付基礎日額 x 365日 x 保険料率 ※ 上記シミュレーションは給付基礎日額10,000円の場合の概算です。 ※ 第一種特別加入保険料率は、当該事業に適用される労災保険率と同一です。 ※ 出典:厚生労働省「労災保険率表」(令和6年4月1日改定)

給付基礎日額の選択幅と補償額への影響

給付基礎日額は3,500円から25,000円の範囲で選択でき、選んだ金額が休業補償・障害補償・遺族補償などすべての給付計算の基礎となります(厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」)。

金額が高いほど補償は手厚くなりますが、その分、年間保険料も上がります。給付基礎日額を3,500円から25,000円に変更すると、補償額は約7倍になる一方、保険料も同じ割合で増加します。「低い日額で加入しておけばいい」と考えがちですが、実際に休業した際に補償が実態と大きく乖離すると、制度を活用した意味が薄れてしまいます。

所得水準に合った給付基礎日額の選び方

給付基礎日額は、実際の所得や生活費をベースに「もし休業になったとき、最低限必要な金額をカバーできるか」という視点で選ぶことをおすすめしています。

実務的な目安として、「月収 ÷ 30日」で1日あたりの所得を算出し、その水準に近い日額を選ぶと判断しやすくなります。月収30万円の方であれば1日あたり約10,000円となり、給付基礎日額10,000円を選ぶことで補償が実態に近くなります。当事務所の経験では、日額8,000円〜12,000円を選択される事業主様が最も多い傾向にあります。

「低すぎず、高すぎず」というバランス感覚が重要です。保険料の負担と補償内容を天秤にかけながら、ご自身の状況に合った日額をご一緒に考えましょう。

加入時に健康診断が必要になるケースとは

特定の有害業務を一定期間行ってきた場合、特別加入の申請前に所定の健康診断の受診が義務付けられています。これは、加入後に業務起因性の疾病が発症した際の補償範囲を明確にするために設けられた要件です。

厚生労働省の資料が定める対象業務は、主に①粉じん作業(従事期間3年超)、②振動工具使用業務、③鉛業務、④有機溶剤業務の4種類です。建設業で長年、研削・はつりなどの粉じんが発生する作業に従事してきた方は、加入前の健康診断が必要になるケースが多くあります。一方、事務系業務やこれら4業務に該当しない作業が中心であれば、健康診断は不要です。

「自社の業務が対象になるかどうかわからない」という場合も、業務内容をお伝えいただければ一緒に確認いたします。健康診断の手配を含め、申請前の準備もまとめてサポートできますので、どうぞお気軽にご相談ください。

特別加入で受けられる補償の種類と認定範囲

特別加入制度に加入すると、療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償の4種類の保険給付が受けられます。これは通常の労働者が受ける労災保険と同等の内容であり、中小企業の事業主や役員でも、万が一のときに生活と事業を守る補償として機能します。

ただし、補償が認められるのは「労働者が行う業務と同種の業務に従事している際に発生した災害」に限られます。補償の対象範囲を正しく理解しておくことで、いざというときに適切な申請ができます。

受けられる4種類の保険給付とその内容

特別加入で受けられる保険給付は、療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償の4種類です。それぞれが「どんな場面で使えるか」を知っておくと、制度がぐっと身近に感じられます。

療養補償は、業務中や通勤中のケガ・病気の治療費を補償するものです。指定の医療機関であれば、窓口負担なく治療を受けられます。休業補償は、ケガや病気で仕事を休んだ際に、療養開始から4日目以降を対象として給付基礎日額の約80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます(厚生労働省規定)。

障害補償は、治療が終わっても後遺症が残った場合に、障害の程度に応じて年金または一時金が支給されます。遺族補償は、業務災害や通勤災害で亡くなった場合に、遺族の生活を守るための給付です。厚生労働省の定める制度に基づき、どの給付も労働者と同等の内容が適用されます。

特別加入で受けられる4種類の保険給付
補償の種類 支給されるケース 支給の目安 給付の形式
療養補償 業務中や通勤中のケガ・病気で治療が必要になった場合 治療費全額指定医療機関で窓口負担なし 現物給付治療そのものを提供
休業補償 ケガや病気の療養のため4日以上仕事を休んだ場合 給付基礎日額の約80%休業補償給付60%+休業特別支給金20% 日額給付休業4日目以降が対象
障害補償 治療が終了しても後遺障害が残った場合 障害等級に応じた金額1~7級: 年金 / 8~14級: 一時金 年金一時金障害等級により異なる
遺族補償 業務災害・通勤災害により死亡した場合 遺族の人数に応じた金額生計維持関係のある遺族が対象 年金一時金遺族の状況により異なる

業務災害として認められる作業と認められない作業

現場での作業中のケガは認定されやすい一方、純粋な経営者業務(会議・商談・会食など)は対象外になりやすい。これが、特別加入の補償範囲を理解する上での核心です。

特別加入の業務災害として認められるのは、「労働者が行う業務と同種の業務」に従事している最中の災害です。工場内での機械操作・建設現場での作業・荷物の運搬中のケガなどは、認定されるケースが多くあります。一方、取締役会への出席中・社内会議の移動中・経営判断のための外出中に発生した事故は、「事業主としての活動」とみなされ、補償の対象外となる可能性があります。

業務災害として認められる作業と認められない作業
認められやすい作業例
建設現場での作業足場の組立、資材の運搬、施工作業など
工場内での機械操作プレス機、旋盤、溶接機の操作など
荷物の運搬作業倉庫内のピッキング、積み下ろしなど
認められにくい作業例
×
取締役会・社内会議経営方針の決定、役員会への出席など
×
経営判断のための外出商談、営業活動、視察・出張など
×
接待・会食取引先との懇親会、会食での移動中など
※ 判定基準:「労働者が行う業務と同種の業務」に従事中かどうかが認定のポイントです

当事務所に寄せられるご相談では、「現場作業と経営業務を兼務している」というケースが多く、どの時間帯・どの作業中の災害かによって認定の可否が変わることがあります。「自分の業務は対象になるのか」と迷う場合は、具体的な業務内容をそのままお伝えいただければ、一緒に整理いたします。

通勤中のケガは補償されるか:通勤災害の扱い

通常の労働者と同様に、特別加入者も通勤中のケガは「通勤災害」として補償されます。業務中だけでなく、自宅から職場への移動中に発生した事故も補償対象となる点は、特別加入の大きなメリットのひとつです。

ただし、「通勤中ならすべてOK」ではありません。通勤として認められるのは、「合理的な経路・手段による移動」に限られます。通勤途中に業務と関係のない場所に立ち寄った場合(逸脱・中断)は、その後の経路も原則として通勤災害の対象外となります。ただし、日用品の買い物など「日常生活上やむを得ない行為」については例外が認められる場合があります。

補償が受けられないケースと申請時の注意点

特別加入の対象範囲外の業務中のケガや、申請手続きを正しく行わなかった場合は、補償が受けられないことがあります。「加入していれば何でも補償される」という誤解が最もトラブルにつながりやすいため、あらかじめ押さえておきましょう。

よくある誤解のひとつが、「会食の帰り道でのケガも補償される」というものです。業務上の会食後の帰宅は通勤とは異なり、通勤災害には該当しないケースが多くあります。ただし、会社の業務命令による会食の場合は業務災害として扱われる可能性があるため、状況によって判断が分かれます。

また、加入申請が承認される前に発生した災害は補償されません。「繁忙期が始まる前に手続きを済ませる」ことが、補償を確実に受けるための実務的な対策です。申請書類の記載内容に誤りや不備があると、給付が遅れたり認定されないリスクも生じます。労働保険事務組合への委託や社労士への依頼を通じて手続きを進めることで、こうしたリスクを大幅に減らせます。書類作成から提出まで対応いたしますので、ご不明な点はお声がけください。

特別加入の申請手続きと社労士への依頼方法

特別加入の申請は、労働保険事務組合を通じて所轄の労働基準監督署長へ提出し、都道府県労働局長の承認を受けて行います。手続きには複数のステップがあり、申請書の記載内容や提出先を誤るケースも少なくありません。申請の流れから書類の記載ポイント、社労士に依頼するメリットまでを順を追って解説します。

申請から加入承認までの手続きの流れ

申請から加入承認まで、申請の翌日から最大30日以内で、申請者が希望する日が承認日となります(厚生労働省「特別加入制度のしおり」)。補償は承認が下りた日から開始されるため、現場作業が多い繁忙期の前に余裕をもって手続きを進めておくと安心です。

手続きは、①事務委託の確認→②申請書の準備→③監督署への提出→④承認・加入完了、の4ステップです。

申請から加入承認までの手続きフロー
STEP1
事務委託の確認
確認
STEP2
申請書の準備
準備
STEP3
監督署への提出
提出
STEP4
承認・加入完了
完了

特別加入申請書の記載事項と提出方法

申請書には、氏名・業種・業務歴・給付基礎日額・労働保険番号などを記載し、労働保険事務組合を通じて所轄の労働基準監督署長へ提出します(監督署長経由で都道府県労働局長が承認)。様式は厚生労働省のサイトからダウンロードできます。

記載ミスや提出先の間違いが起きやすい部分でもあるため、一つひとつ丁寧に確認することが大切です。「どこに何を書けばよいかわからない」という場合も、ご相談ください。

社労士に依頼するメリットと費用の目安

社労士に依頼すると、書類準備から申請・承認後の変更手続きまで一括して任せられます。手続きの手間を省けるため、経営者が本業に集中しやすくなります。費用は依頼内容によって異なりますが、記載ミスのリスクや手続きに要する時間を考えると、費用対効果は十分に期待できます。まずはお気軽にご相談ください。

加入後の変更・脱退が必要な場合の手続き

給付基礎日額の変更は、毎年の年度更新時(3月2日〜3月31日の申請期間)にのみ行うことができます。年度途中での変更は原則認められないため、変更を希望する場合は早めにご確認ください。脱退の際は、労働保険事務組合を通じて所轄の労働基準監督署長経由で「特別加入脱退申請書」を提出し、都道府県労働局長の承認を受けます。

「従業員が増えて中小事業主の要件区分が変わったとき」や「廃業の際の脱退届」など、状況に応じた手続きがあります。変更・脱退の際も、書類作成から提出まで対応いたします。

よくある質問(労災保険 特別加入に関するQ&A)

Q1. 代表取締役(社長)も特別加入できますか?

A. はい、加入できます。代表取締役は労働者に該当しないため通常の労災保険は適用されませんが、中小事業主の特別加入を利用することで補償を受けられます。業種別の従業員数要件を満たし、労働保険事務組合に事務委託することが条件です。

Q2. 従業員が1人もいない場合でも加入できますか?

A. 中小事業主等の特別加入は、労働者を1人以上雇用している事業主が対象です。従業員がいない場合は、一人親方等の区分での特別加入をご検討ください。一人親方向けの特別加入は、建設業や個人タクシーなど特定の業種で利用できます。

Q3. 特別加入の保険料は経費として処理できますか?

A. 個人事業主の場合、特別加入の保険料は必要経費として計上できません。法人の場合も、役員個人が負担した保険料は損金算入の扱いが複雑になるため、税理士への確認をおすすめします。

Q4. 加入後すぐに補償は始まりますか?

A. 労働局に申請が承認された日から補償が開始されます。申請から承認まで数日〜1週間程度かかるため、補償が必要な時期を逆算して早めに手続きを進めるとよいでしょう。

Q5. 脱退する際の手続きはどのようになりますか?

A. 特別加入を脱退する場合は、脱退申請書を労働局に提出します。事業の廃止・縮小や事業主でなくなった場合も同様の手続きが必要です。変更や脱退の際も、書類作成から提出まで対応いたします。

Q6. 健康診断が必要になるのはどんな場合ですか?

A. 粉じん作業・有機溶剤業務・鉛業務・放射線業務など、特定の有害業務に従事する場合は、特別加入の申請前に所定の健康診断の受診が必要です。該当する業種かどうかわからない場合は、お気軽にご相談ください。

まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。「社長は労災保険が使えない」という現実に対して、特別加入制度は中小企業の経営者を守るために設けられた実用的な制度です。業種と従業員数の2点を確認し、労働保険事務組合に事務委託することで加入できます。この記事の重要なポイントを改めて整理します。

  • 中小企業の事業主・役員は通常の労災保険の対象外だが、「特別加入制度」を利用すれば療養・休業・障害・遺族の4種類の補償を労働者と同等に受けられる
  • 特別加入の年間保険料は「給付基礎日額×365×保険料率」で計算でき、給付基礎日額10,000円・建築事業の場合は年間約34,675円(令和6年度・厚生労働省規定)と、実態に即した保険料設定が可能
  • 補償が認められるのは「労働者が行う業務と同種の業務」中の災害に限られるため、現場作業中のケガは対象になりやすい一方、経営者としての会議・商談・会食中の事故は対象外となるケースがある

現場に出ることが多い中小企業の経営者にとって、業務中のリスクは身近な問題です。特別加入制度は法律上の矛盾を補うために設けられた制度であり、厚生労働省が管轄する公的な補償の仕組みです。「自社が対象になるかわからない」「保険料がいくらになるか試算したい」という方も、業種と従業員数をお伝えいただくだけで確認できます。KT社会保険労務士事務所では、申請書類の作成から労働保険事務組合との調整・承認後の変更手続きまで一括してサポートしていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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